INEIは日本のコンセプトアートスタジオです。

日本では残念ながらコンセプトアーティストは他のデザイナーに比べて浸透していません。そんな経緯もあり、日本人のコンセプトアーティストは海外で働くことを最終目標にしていることが多いようです。コンセプトアーティストのゴールは海外にしかないのか?そんな疑問を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

INEIは日本で仕事をしていて思うこと、それは”今の日本だからこそできる仕事がある”ということ。コンセプトアートが当たり前の文化になっていない現状の日本では、実はチャンスがつかみやすいのです。今回はINEIが日本でコンセプトアーティストとして活動する面白さ、そして秘めたる可能性についてをお伝えいたします。

エンターテイメントは今が勝負! バイネームで仕事ができるのは日本だから

2019年11月公開映画【HUMAN LOST人間失格】INEIがコンセプトアートを提供
HUMAN LOST 人間失格 公式サイト

コンセプトアートといえばエンターテイメント。エンターテイメントとコンセプトアートは切っても切れない関係にあります。海外でもコンセプトアーティストのほとんどの仕事は映画やゲームにまつわるものと考えて間違いはないでしょう。INEIの仕事もエンタメ作品に関連するものが多いです。


現在好評公開中【最果てのバベル】INEIがコンセプトアートを担当
最果てのバベル 公式サイト

海外のプロダクションの事情も各社それぞれではありますが、分業化は確実に日本より進んでおりシステマチックに制作していることがほとんどです。それぞれのコンセプトアーティストにやることが割り振られて管理されているので、ストレスが少なく働くことができるようです。

日本における制作でも分業化は進んでいますが、コンセプトアート自体を分業化することはまだまだ少なく、ひとりのコンセプトアーティストが大きな裁量を持って動くことができています。

INEIはエンタメのプロジェクトでも、出発地点から作り上げて行きたいと考えています。企画が何かしら決まっている状態でオファーをいただき、そこから肝となる世界観を作り出すこともありますが「これ、面白そう!」という突発的なアイディアから大きなプロジェクトが始まることも。それは仕事でワクワクを感じる部分のひとつです。

小さなプロダクションや一個人のアーティストがバイネームで初期工程から作り上げていけるのは、まだ分業化されていない状態だからこそ。指名していただける場合、ありがたいことに予告の段階でクレジットを出していただけることもあります。これも”日本ならでは”かもしれません。

日本だからこそ多彩な業界に携われる 発展途上なコンセプトアーティストの仕事

日本では海外のプロダクションのようにコンセプトアーティストが制作チームに当たり前いるわけではないので、「コンセプトアーティスト」と呼ばれる職業の自由度はかなり高めです。社会がまだ可能性を模索しているので、エンターテイメント産業以外でもコンセプトアートが広く活用され始めています。

2019年現在、サービスや商品の成功の鍵として、「デザイン」の要素がとても強くなっていると感じます。世界的にも、よりアーティスティックな考えを持って経済活動をしていく流れは広がっており、ますます加速しそうな勢いです。

デザインシンキングやクリエイティブシンキングがじわじわと浸透してきている昨今、コンセプトのビジュアル化はさまざまな分野で求められています。例えば建築、工業デザイン、都市開発、ITシステムなどを開発する際に、設計図を作る前段階でコンセプトを固めるために用いられること増えてきました。

INEIでもデザインシンキング浸透への舵を切っている大企業や団体からのお仕事のご依頼のみならず、コンセプトデザインのワークショップやセミナー講演の依頼をいただくことが増えてきました。ただビジョンを絵として作るだけではなく、ビジュアル化することの意味を理解してもらうことがコンセプトアート浸透、そして活用への第一歩だと考えています。

宇宙開発にもコンセプトアート!? 世界のコンセプトアート事情

SpaceXの試験用Starship

日本で働く面白さをお伝えしてきましたが、海外では今どのような動きがあるのでしょうか?

アメリカではコンセプトアーティストはまた大きな一歩を踏み出しました。2018年の末、米国のゲーム会社「Blizzard Entertainment」でコンセプトアーティストとして働いていたMathias Verhasseltさんが民間宇宙ベンチャーである「Space X社」にデザイナーとして入社されました。エンターテイメント業界から宇宙開発の道に進むなんて、なんて夢がある話でしょうか。

Mathiasさんが入社されてから、Space X社のデザインはすごく魅力的になったように感じます。無骨な見た目だったロケットが、説明なしで”カッコいい”と思える見た目になりました。

”カッコいいデザイン”であることは、ビジネスにおいても重要な要素です。みんなが憧れるものは、たくさんの人をワクワクさせます。期待する人が多ければ多いほど、購買層が広くなったりそれに出資する人や企業が増えたりするのです。デザインはそういった意味でビジネスと直結しています。

日本でも経営産業省から「デザイン経営」が宣言された今、上記のような取り組みが様々な企業で進められるのではないでしょうか。