第3回 ポートフォリオの組み立て方

こんにちは。INEIコンセプトアーティストの大曽根です。

前回では、ポートフォリオに加える作品を選ぶ上での注意点を書かせて頂きました。

今回は、今まで一生懸命作ってきた自分の作品をより効果的に見せる為に、どのように組み立てていくかと、その際私が気を付けたことを紹介します。

特にPDFや実際にファイリングするものは、基本的に1枚1枚順番に目を通すことになりますから、作品の順序はとても重要です。また、作品の見せ方によっても見る側に与える印象が変わってきますので、そんなことも含めて、ポートフォリオを組み立てる際の参考にして頂けたら幸いです。

①重要度を考える

ポートフォリオに載せる作品の順序において、まず私が考えたことは、「重要度順に選ぶ」ということです。重要度とは、作品のクオリティだけでなく、送り先のアートワークのスタイルによっても変わってくると思います。例えばどんなにハイクオリティなSFのコンセプトを作ったとしても、それをポップで可愛いスタイルのゲーム会社に送ってもあまり意味が無いように、「どの作品を一番に持ってくるか」は吟味する必要があると思います。

大まかに重要度で組み立てを考えると、最初の数枚はその人の顔にあたるところなので、一番見せたい作品を選ぶべきだと思います。最後の数枚も心理的に見る側の印象に残るところなので、ここもベストな作品を載せたいところです。中間は、その人のスキルがより深く分かるような作品、例えばプロップデザインやシンキングプロセス(第2回参照)を含めておくと良いと思います。私の場合も、以上のような構成にしました。

また、細かいですが気を付けることとして、ファイリングしたものを提出する場合です。相手にとってはどちらが表裏か関係なく開くこともありますから、表裏の最初の数ページは最高の数点で占めた方が良いと思います。

②ジャンルで揃える

①で書いたのは、単純に「どれが一番見せたいか?」の順番でした。しかし、多くの方はそうであると思いますが、いくつかのジャンルを混ぜてポートフォリオを作る場合は、ジャンルによっても作品の順序は変わってくると思います。

例えばファンタジー⇨ファンタジー⇨SF⇨ファンタジー⇨SFというように、ランダムで載せるよりは、ファンタジーなら1つのまとまりで続いていた方が統一感があると思います。(ジャンル分け例 ①)

また、エンバイロンメントのコンセプトや、キャラクターデザインなどのジャンルをそれぞれグループ分けしてみるのも良いかもしれません。例えば、自分はキャラクターを描く方が得意、という方は前の方のページにそれらを持ってくるのもありだと思います。ただ、基本的にはエンバイロンメントなどの大きく世界観が分かるものからプロップなどの小さなデティールにシフトしていく方が自然だと思います。(ジャンル分け例 ②)

私の場合は、ポートフォリオを組み立てる際に、このように「ジャンル」と、①で書いたような「作品の重要度」を考えながら、大まかな作品の順序を決めました。

※エンバイロンメントデザイン・・・環境や背景のデザイン。世界観が一目で分かるもの。
※プロップデザイン・・・武器、家具、装身具や食器など、小物のデザイン。

③カラーストーリーを組み立てる

ポートフォリオの順序を決める上で、各作品の色味も考えて構成するとより完成度が上がって見えます。

例えば、暗い寒色系の作品の中に、いきなり明るい暖色の作品が混じっていたら、違和感を感じますよね。そういう時は、色相や明度によって作品を並び替えてみると良いかもしれません。例えば下の図でいうと、オレンジ色と紫色を基調とした作品が隣り合う場合に、そ中間にある色相や明度の作品を持ってくると、グラデーションになりスムーズに目を通せるかと思います。

もしどうしても順序を変えられない場合は、作品と作品の間に比較的彩度の低いグレイッシュな作品を挟んでおくと、それがクッションになり違和感が緩和されることがあります。 また、必要であれば前後の作品の色味に合わせて、その間の作品の色味も多少調整しておくと良い場合もあります。

④載せる作品の注意点

既存の作品をベースに作ったファンアートや、極度にエロ・グロテスクなもの、理解するのが困難な作品は載せるのを控えた方が良いかもしれません。例えそれがどんなに完成度が高く、自分にとって美しいと感じるものだとしても、人によっては生理的に受け付けない等の理由で拒否されてしまう可能性があるからです。つまり、「自分の芸術を売り込むこと」と、「コンセプトアーティストとしての職につくこと」は切り離して考えた方が良いということです。

また、ポートフォリオに載せる作品で、特にオンラインで公開する場合は、使用する参考画像には注意が必要です。当たり前かもしれませんがインターネットで拾ってきた写真をそのまま使ってしまうと、著作権に引っかかることがあります。自分で撮影した写真やライセンス購入した画像を使うようにしましょう。

今回はポートフォリオを組み立てる上で、私が気を付けたことを紹介させて頂きました。

書いていて思ったことは、ポートフォリオは相手に自分の良さを見てもらうものなので、結局細かいところまですべて気を使ってあげた方が良いということです。代表の富安は、「ポートフォリオそれ自体に価値があって、ずっと持っていたいポートフォリオ」を目指すべきだと言っていました。

また、入りたい会社や参加したいプロジェクトが明確に決まっている場合、そこに合わせてカスタマイズするのが一番理想だと思いますので、構成する作品のジャンルや順序も、見せたい相手によって変えてみるとより良いと思います。

次回はポートフォリオのデザインについて書いてみたいと思います。

第1回 ポートフォリオの目的とルール

第2回 ポートフォリオにおける作品選びの注意点

掲載作品/ INEI Inc. 文/ 大曽根純

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